「こ う し ろ う 君!」

       妙に意味あり気に区切りながら、何かを企んでいる様な笑顔で近づいてくるミミ。 そんな表情すら愛らしいと思わせてしまうのは、彼女の最大の魅力だ。 万人が、彼女の微笑みに靡かないものはいないだろう。

       しかし、耐性ができているのか、(はたまた関心がないのだろうか…)呼ばれた当人は振り向きもしない。

       それでもミミは、「ねぇ〜」と言って、気を引こうとする。





      「何ですか、ミミさん」

       まだ視線はミミのほうへ移ったわけではなかったが、それでもこちらに関心を寄せてくれただけでも満足したミミは、 「trick or treat!」と言って、両手をちょこんと差し出した。

       思わず視線をミミへ向ける光子朗。ミミは満面の笑みを浮かべている。

       そんなミミの溢れんばかりの笑顔を見ていると、難しい顔をしていた光子朗も、ふっと笑いが零れてくる。

      「あー何よ、笑うなんてヒドイぃ〜!」

       プンプンと抗議するミミを見ていると、毒気を抜かれていくのを、光子朗は感じていた。

      「はいはい、お菓子ですね」

       ディスプレイの横の小箱に手を伸ばす光子朗。きょとんとした顔で小首を傾げてミミはそれを覗き込む。 そこには、色とりどりの飴玉が収まっていた。そして、その一つを摘み上げると、光子朗は「Happy Halloween」といって差し出した。

       それでもまだ、狐につままれた顔をしているミミ。光子朗のことだから、そんなことには関心がなくて、 だから普段冷静な光子朗を少しからかってやろうと、そう思っていたのに。

      「きっとミミさんのことだから、そういうと思って用意していたんです」

       まるでミミの心の裡を読んだかのように、はにかんだ様に薇笑いながら、光子朗は言った。

       そういえば、光子朗は机の上にお菓子を置いたりはしなかった。

       カっと、頬が熱くなるのを、ミミは感じていた。








    ***


      ミミの言動はお見通し的光子朗SS。
      偶には立場が逆転しても面白いかも。




                       28 Oct 2006 MumuIbuki





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