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       一時選考でもある書類審査に難なく通過したミミは、とんとん拍子に二次、三次と通過していく。

       元来、笑顔の可愛いらしい容姿に平均よりすらりと高い身長、緩くカールした色素の薄い栗色の髪、それに加え甘く澄んだソプラノボイスは見る者を惹きつける魅力を持っていた。

       また物怖じしない態度は、目の肥えた審査員であっても視線が集中するのも納得がいく。





      ――そして迎えた最終選考当日





       ミミは若干緊張はしていたものの、元々持っていた自信と、ここまで来れたと言う事実を確信に換え、オーディション会場へ向かっていた。

       通い慣れたゆりかもめまでの道、自信はあれどはやる気持ちを抑えながら、いつもより速い足取りで進んでいた。

       角を曲がればお台場海浜公園駅に着く、という所で思いがけない人物と遭遇してしまった。

       光子郎である。

       あれから全く口もきかず視線も合わせなかった二人は、久し振りに目を合わせた。

       この状況で無視するのも気が引けたミミがなんと言ったらいいか口篭り、足取りが鈍くなり立ち止まってしまったのを見て、光子郎は「こんにちは」と何事も無かったように挨拶をした。

       その光子郎の何気ない態度に内心ほっとしたミミも、合わせて挨拶を述べた。

       しかし次に出てきた光子郎の何気ない言葉に、ミミは再び凍りついてしまった。

      「どちらかへお出かけですか?」

       照りつける真夏の太陽にもかかわらず、ツーっと米神の辺りを流れる汗は、心なしか冷たく感じられた。

      「これからオーディション。最終選考なの」

       気の利いた嘘も思いつかず、ミミは事実を述べることしか出来なかった。それを聞いて光子郎が何ていうのか想像できないミミは、まるで審判を下される罪人のような気持ちで次の言葉を待った。

       しかし、光子郎はミミが考えていた言葉と全く逆の事を言った。

      「もう最終選考ですか。それでは頑張ってくださいね」

       元来嘘を吐くのが苦手な光子郎だが、それはまるで本心から言ってるように、付き合いがそれなりに長いミミは感じた。そして、「その帽子、とてもよく似合いますよ」と光子郎は笑って付け加えた。

       指摘された帽子の広いつばを両手でぐっと握りこんで顔を隠すと、ミミは小さな声で「何で?」と問いかけた。

       聞き取れなかったのか、ミミの行動に首を傾げた光子郎だが、すぐに顔を上げたミミが「ありがとう。頑張ってくるわ」といつもの笑顔で答えた。





       電車の時間があるからと、そのまま光子郎と分かれたミミは、先程より駆け足で駅へと向かった。





       ミミが駅舎に入り見えなくなるのを確認すると、光子郎はもと来た道を戻っていった。








    ***


      「ミミが駅舎に入り見えなくなるのを確認すると、光子郎はもと来た道を戻っていった」んです。
      なんだかんだ言ってすれ違いでも光ミミです。

      次最終選考です。
      ここが一番書きたかったシーンです!



                       10 Nov 2005 MumuIbuki





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