節分






       バタバタと廊下を乱暴に慌ただしく駆ける音がこだまして、それが徐々に近づいてくる。

       すぐ側まで近づいてきてパタリと止んだ、かと思うと足音と同じようにこれまた乱暴に勢い良くガラリと扉をスライドさせる。

       屈託のない、見ているこちらまで思わず笑顔が伝染ってしまうような満面の笑みの大輔が、その扉の向こうに現われた。

       がしかし、大輔が何かを言うより先に何かが彼に向かって飛んできた。

      「鬼はぁ外ぉ〜!!」

       条件反射で本能的に思わず顔を覆った大輔は、その洗礼が止むないなや、「何すんだよ、京!!」と、殊更乱暴に吐き捨てた。

       まぁそれも、無理もない話ではある。

      「だって今日は節分でしょvv」

       京は、まるで聞き分けのない子どもを諭すかのように言った。

       回りではクスクスと、堪えるでもなくタケルとヒカリが声をたてて笑っていた。

      「あぁ〜ヒカリちゃんまで酷いょぉ」

       泣き付くように大輔が言うが、ヒカリの手にはしっかりと豆が握られている。

      「こらタケル!お前は笑うな!!つかお前が鬼ヤレヨー」

       ヒカリと話していた時と打って変わって三白眼の大輔だが、「大輔さん以外に適任はいないと満場一致で決定しました」と伊織がさりと追い打ちをかける。

      「そんなのいつ決めたんだよ」

       オレは聞いていないと、付け加える大輔。

      「んー、何となくかなぁ?伊織が言った通り大輔以外適任者はいないから、特別決めたとかじゃ無いのよ」

       だから頑張ってと、笑顔の京に促され、ヒカリが鬼のお面を大輔に手渡す。

       ヒカリにお願いされてしまったら、大輔としては嫌とは言えないだろう性格を利用しようと、京が予め仕組んでおいたことだ。

       そのお面を渋々受け取った大輔だが、「やっぱりオレが鬼なの?」とヒカリに懇願の眼差しを向ける。

       大輔にとって天使であり女神であるヒカリは、みんなに唆されているだけだと、本当に信じているからだ。

       しかし、当然と言えば当然のように、「ゴメンネ、大輔君。でも、頑張って」と笑顔を向けられてしまえば、従うほか無い。

      「…タケルじゃダメ?」

      「ヤマトさんが黙ってないと思うわ」

       即答。ヒカリの笑顔が一層増す。

      「いお…」

      「下級生にそんなことするの?」

       大輔君ってそんな酷い人じゃないわよね、とそもそも大輔が言い終わらない内に、逃げ場を作らないように追い討ちをかける。勿論笑顔は絶やさない。

       ヒカリの背後では、京達が「往生際が悪いわよ」と揶揄している。

      「賢は!」

       最後の頼みのツナとしてあげた名前だが、その場にいないことを思い出すと、がっくりと肩を落とした。

      「一乗寺さんは遅れてくるから、先にやっていてとのことですって。だから、ね」

       逃げ場の絶たれた大輔は、最早お面をつける道しか残されていない。

       そもそも、逃げ道など存在しないのだが。

      「…あんまり強く投げないでね…」

       引きつった笑顔の大輔だが、このメンバーではそれも望めないだろう。

       






    ***


      ブログでちょっと打った「節分」SSの続きです。
      賢ちゃん出せなかったです(泣)
      大輔は、やっぱり哀れが一番良く似合う!
      大輔と絡ませるなら、ヒカリ(+タケル)は腹黒じゃなきゃ★



                       3 Feb 2006
                      27 Feb 2006 加筆
                                   MumuIbuki





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