虹 背後から、不意に名を呼ばれ、少女は陽光を反射させ煌めく長い髪を翻して振り向く。 その表情は、声の主を捉えると、見る間に鮮やかな色を放ち始める。 まるで、色とりどりの感情という名の絵の具を、絶妙なバランスで混ぜたかのような。 見る者をも染め抜くその屈託の無い笑顔。 呼び掛けた少年も気付かない内に、自然と笑みが零れていた。
「うわぁ、賢君!久し振りじゃない?」 心持ち頬を上気させながら少女は賢に向き直る。 「…お久し振りです」 律儀なのか几帳面なのか、鸚鵡返しに答える賢。 しかし、とても聡い彼だが、咄嗟に何を言えばいいか分からなかった、と言うのが本音だった。 京を捉えると直ぐに、考えるより先に呼び掛けていたから、いざ言葉を交わす段に入って困惑してしまい、精一杯絞りだした言葉があれだったのだ。
「賢君に会うって分かっていたら、もっと可愛い格好してくるんだった!」 唐突に、あまりにも突拍子もないことを口にするものだから、賢も絶句してしまった。 しかし、それは当の京も同じだったらしく、「…え」と、期しくも同時に間抜けな声を出してしまった。 決して、京の格好は可笑しかったわけではない。 寧ろ、相手に好感を抱かせるには十分なシンプルにして清潔感のある、実に清楚な出で立ちだった。装いだった。 その為、賢は抱いた素朴な疑問を口に出しただけだったのだが、京はそうではなかった。 何故“彼”の前で“こんなコト”を想ってしまったのか…。
くるくる回る色とりどりの絵の具に、新しい色(キモチ)が混ざるのは、もう時間の問題かもしれない。
久々のブログ日記に投稿SS。 朝の通勤中、チャリをぶっ飛ばしながら (嘘、ちんたら走ってました。もう若くないから) 浮かんだネタ。 冒頭の描写は、打ちながら生まれた、偶然の産物なんだけど、 結構お気に入りで、 テーマは違うんだけど、タイトルのモチーフにしちゃいました(ー^□^ー) 比喩も一貫して(?)これを通して、うまく纏まったとは思うけど(自画自賛)、 前に書いたSSと似たり寄ったりになっちゃった… …どうっすかね(;^_^A 06 jul 2006 MumuIbuki ---------------------- ブログに載せたきり、存在をすっかり忘れてしまっていたので、 今頃掲載。 軽く1年経ってます(汗) 2007年7月16日 息吹・拝 ブラウンザでお戻り下さい |