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戦え!少尉さん
「はひ?」
とりわけ間抜けな呟き声が、周囲の喧騒とは対照的にこだまして、そして消えた。
いや、消えたと思うのは彼以外の者にとってで、当の本人にしては突き付けられ
た事実が頭の中を猛烈なスピードで駆け巡っていたに違いない。
あまりの衝撃に意識が飛んでしまったのか、咥えていた煙草から灰が落ちるのも
気付かないほどだ。
ふぅ、と一つ溜息を吐いて、彼にその事実を告げた直属の上司は、今にも灰が落
ちそうな煙草を彼の口から奪うと、手にしていた携帯灰皿に押しあてた。
「まぁそう言う事だ。これを期に禁煙でもしたらどうだ?」
「冗談じゃないっすよ!」
人気もなく、普段から人通りの少ない建物の裏手にくるとそう一人ごち、辺りを
探るように見回し、誰もいないことを確かめると胸ポケットから煙草を一本取り
出し、ふぅと重い溜息とともに吐き出す。
(一体全体、俺が何したっていうんだ?)
考えてみても思い当たる節が見当たらない。
確か大佐は、昨今民間で施行されている受動喫煙防止運動を軍でも採用する方向
で事が進んでいるから、まぁ新参者はそれに従う外ないのだよ、とかなんとか、
嘘臭い顔つきで言ってたっけ。
もう一息吐き出そうと咥えている煙草に指を近付けた時、頭上で、ガチャリと
嫌な物音がした。
あまりに聞き慣れ過ぎたそれに悪寒を感じつつも恐る恐る顔を上げる。
すると、この世の者とは思えない形相で睨み付けている中尉が、
愛用のショットガンの安全装置を外した状態で照準を俺に定めている。
(抵抗すれば間違いなく殺られる。)
俺の本能と長年の経験が警鐘をけたたましく鳴らしている。
降服を表すポーズをすると、中尉は舌打ちをして煙草を始末しろと言うジェスチ
ャーをする。
7階にいるはずの中尉の舌打ちが聞こえたようで背筋が凍る。
しかしなぜまたバレたんだ?
恐る恐る、司令室に戻ると珍しい顔があった。
「よぉ大将」
先程の恐怖体験などなかったかのように片手を挙げて近づく。
おっかない顔つきで俺を狙ってる司令室のメンバーとは対照的な笑顔にほっとす
る。
「少尉も大変だよなぁ」
何が可笑しいのか、エドは腹を抱えて半笑いの状態だ。
久々に会ったにも拘らず第一声がこれでは、益々もってこの状況が解らない。
これ、と大佐に窘められてもエドは笑いを堪えずにはいれないようだ。
また、そんな様子に大佐も感染したのか、笑いが交じった声で言ったその言葉は、全くもって説得力が無い。
「しかし鋼の、君にとっても全く無関係と言う訳ではないのだよ」
そんなに愉快だったの
か目に涙を溜めて、それを必至で堪えている大佐は、震える声を気にも留めず、言葉を続ける。
「喫煙とは成長期の子どもにとってはそれを妨げる有害物質でしかなく、受動喫煙は更にその害が大きいと言われて―」
大佐が言い終わらない内に、エドは、本当か!と、先程まで笑い転げていた目を、綺羅綺羅と真剣な表情に輝かせながら、
執務机を乗り越えんばかりの勢いで問い掛ける。
「ぁ、あぁ・・・」
若干、エドの勢いに飲まれたのであろう、大佐は引き気味に、でも何とかはっきりと答えた。
その様子は、先程まで蚊帳の外だったオレにも、可笑しくて笑いそうになったが、
エドが言ったその言葉によって一瞬の内に氷漬けになされたような気がした。
「じゃあオレも協力するよ、少尉の禁煙に!」
力の篭った目に見詰められて、俺は怯む。
大佐に、何の事なのかと言う目で助けを求めたが、まぁそう言うことだ、と言って笑うばかりだ。
その笑みも、哀れんだ目、と言うよりは明らかに面白がっている。
そう言うことなのか。
つまりは、このキャンペーンによって、ヘビースモーカーの俺は完全にオモチャにされてるって分けだ。
かと言ってこの過剰なまでの執拗な追跡は何だ?
中尉の奇行といい。
エドはさっきからおっかない形相で追いかけてくる。
時折練成光が視界の端に捉えられるが、何でだ?
後ろを振り返るのも恐ろしい。
勿論、普段はみんないつも通りだ。
俺が隠れて煙草を吸おうとした時、何処から嗅ぎつけたのか、突然態度を一変して翻し追ってくる。
俺が諦めて捕まろうと一瞬気を緩め後ろを振り返ったときの、あの表情が、俺をここまで頑な逃亡を助長している。
あれはオモチャ、と言うよりは明らかに獲物を狙う目だ。
捕まったらどうなるか分かったものじゃない。
だったら、禁煙すればいいのだろうが、それができたらここまで苦労はしない。
気を緩めて、煙草に手をかけた途端これだ。
あぁ。またどこからか、追っ手が参戦してる。
あれはフュリーだろうか。
フュリー程度の足なら何とかまける自信はあるが、大将は…大分自信ねぇな。
俺は舌打ちと共に、近くにあった灰皿へと逃亡しながら近づき、煙草をその中に投げ入れる。
ここ数日間の逃亡劇の末、命中率は格段に上がり、多少離れていても確実に灰皿の中へと煙草は吸い込まれていく。
そして、それが終了の合図かの様に、追っては去っていく。
切っ掛けは分かった。
ただ、ここまでされる理由が未だに分からない。
俺はもう暫く、隠れて煙草を吸い、追われる生活を、強いられる事だけは確か…なんだろうなぁ。
***
やっと書けた!軍部ネタ!!
なんだろ、一体?
受動喫煙禁止法(だっけ?)が施行された時に、
あぁ、こんなん施行されたらハボは可哀想な目に会うんだろうなぁ、
と漠然と考えていたんだけど
実際に書くまでに至らず、
最近思い出したように打ってみました。
中途半端に終わらせたのは、その方がハボがへタレかな?と思って。
私の中では常にハボはへタレです(ギャグにおいて)。
多分、あの執拗さは愛の鞭兼…やっぱオモチャなんだろうな。
中尉のみが愛の鞭で、ちょっとみんなと行動を変えておきました。
某素敵サイト様の小説で、キレたカッコいいリザさんを見て私も書きたくなってしまったのですよ。
私が書くとあまりカッコよくはならなかったのだけど(^^;
12 Sep 2005 MumuIbuki
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