都会の喧騒から隔絶されたこの土地だが、
この日は更に緩やかな時間が流れ
辺りに働く人影は見えない。
代わりに、普段は寄り付きもしない懐かしい声が
珍しくここ、リゼンブールの丘にこだましていた。
「ほらエド、さっさと歩く!!」
先陣を切って小走りで歩を進める少女は、
後ろから仕方なく追て来るといった、
エドと呼ばれた少年に振り返って促す。
「ったく着いた早々何だって言うんだよ、騒々しい奴」
と毒を吐くエドワードだが、
久し振りに故郷に戻った彼等を迎えた少女の嬉しそうな顔を見てしまった為か、
文句を言いながらもこうして促されるまま追て来たのだった。
「まぁ兄さん、ウィンリィにだって何か理由があるんだろうから」
兄であるエドワードを宥めるように言うのは、兄よりも一回り…
どころか、当の兄と続柄を逆に捉えられてしまう、弟のアルフォンスだ。
気心の知れた幼馴染みのウィンリィといる為か、
突然連れ出されたにも係わらず、
表情の観れない鎧姿のアルフォンスの声も嬉しそうだ。
彼等は機械鎧の定期メンテナンスを
偶々近場を通ったからと思い寄ったのだけにも拘らず、
着いた早々こうしてウィンリィに連れ出される羽目になったのであったが、
ウィンリィの家を出てからこうした問答を繰り返しているうちに
初めて出たアルフォンスの『理由』と言う言葉に
僅かに反応した者がいたのを、
エドワードは見逃さなかった。
「どうしたんだよ、ウィンリィ。何かマズい事でもあるのか?」
冗談めいた表情を作るエドワードだが、その言葉にウィンリィは