「大佐!居るか??」
勢い良くドアを蹴破ると、エドワードが物凄い形相で飛び込んできた。
「おや、鋼の。この間とはえらく態度が違うじゃないか」
ホークアイに言われて渋々書類に目を通していたロイが、漸く訪ねてきたエドワードをからかう様に言った。
「大佐、よくもオレにあんな恥ずかしい事させてくれたな!」
エドワードは怒り心頭といった様子で、ロイの言葉などには耳を貸している余裕は無かった。
「何のことだか、私には身に覚えが無いのだが?」
手に持っていた書類を、机の上に戻すと、肘をついて、微笑みながら、わざとエドワードの怒りを逆なでするように言った。
「ほう、白を切るつもりか・・・」
俯きながら言ったエドワードが顔を上げた時、その表情はまさに鬼の子、と言ったところか。
そのまま暴れ出し、両手をポン、と叩くと、壁に手を付き、そこから槍を練成し、ロイにその切っ先を突きつけた。
「全く、物騒だなぁ」
そう言いながらも、ロイはそれを楽しんでいた。
エドワードがロイをたずねる少し前・・・
ホークアイから呼び出されたエドワードは、電話交換室の前に居た。
何の事だか全く分からなかったエドワードだったが、ホークアイに促されるまま、受話器を受け取った。
そこから聞こえてきたのは、懐かしい声だった。
「あ、もしもしエド?私よ、ウィンリィよ」
思いがけない相手に、エドワードは傍に居たホークアイを見上げた。
ホークアイがそっと微笑むと、安心したのか、視線を元の位置に戻し、
「あ、あぁ。どうした、軍に電話なんて珍しいじゃないか」
エドワードは、受話器の向こう側の人間に問い掛けた。
「うん、私も初めはどうしようかと思ったんだけど、今ならまだそっちに居るんじゃないかと思って・・・」
ウィンリィイから電話、という以前に、エドワードに電話が掛かってきた事自体珍しい。
また、それほどまでの内容なのかと、エドワードは固唾を飲んで、次の言葉を待った。
「えっとね、取りあえずありがとう。でも、一体どうしたの??」
質問されたのはエドワードだったが、それは逆に質問したいと思わせる内容だった。
「は、何の・・・」
ここまで言って、エドワードは、はっと息を飲んだ。
「だって、アンタがあんなプレゼントするなんて、どっかに頭でもぶつけたのかと思うじゃない」
ウィンリィイの声は、冗談を言っているようには聞こえず、またその声によって、エドワードは頭の中が真っ白になっていく。
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