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車窓
景色がくるくる変わる。
人々や建物や、空の表情までも、一瞬のうちに、また別のものへと変えてしまう。
そんな、瞬間を、眺めているのが好きだ。
俺に一切興味を示さない。
干渉する事を知らないように、俺にお構い無しに。
与えられるまま、俺はその変化に魅入る。
二度と訪れる事は無いだろう時と重ねて。
目まぐるしく変化する日々と違い、ここから見える景色は非日常。
俺の知らない日常を映し出さしては消え、映し出されては消え。
相手も俺も、お互いを知らず、知り得ず、それでも、一瞬の共有。
そして、何事も無かったかのように、離別。
目に映る全ては本物で、だけど、一瞬の内に全てを知り、得ることは出来ない。
遠い、しかし、どこか、近い存在を、髣髴とさせる。
列車の規則的な振動に身体を預け、
何処に視線を落とす訳でもなく眺めていると、どこか心地良さを感じる。
俺が、ぼぅっと、首から上だけを窓の外に向け、窓枠に頬杖をつき眺めていると、クスッ、と一つ、笑い声が漏れた。
向かい側に座る、その声の主の方に顔だけを向け、少しだけ微笑むと、何だ、と言って腕を前に組みなおす。
外の景色は相変わらず、俺にお構い無しに、その表情をくるくると変えてゆく。
「いや・・・、兄さんを見てるとつい」
笑っては、兄である俺に悪いのだろうと思ったのか、そっと手を口元に当て、笑みを噛み殺す。
その姿は、巨漢に似合わず、可愛らしいという表現が良く似合う。
そして、笑いの主は再び、クスリと笑みを零す。
「つい、でお前は兄を笑うのか、アル?」
背凭れに預けていた上半身を、ずいっと、自分よりも背丈の高い弟を見上げるように、伸ばし、半ば冗談を含んだ、真剣な声で問うた。
「そ、そんなことは無いよ、ただ・・・」
俺の発言に慌てたのか、これまた可愛らしく、両手を胸の辺りでぶんぶん振って、力一杯否定する。
魂だけの存在の弟は、表情として感情を表わす事は叶わないが、こうした何気ない素振り一つでも、弟が傍に居る事を実感できる。
「ただ、兄さんの表情がくるくる変わるのが、面白いなぁと思って」
振っていた手をいつの間にか戻し、悪びれもせず、でもどこかまだ可笑しそうに、小さい子に諭すような優しい声で、アルはそう言った。
「はぁ、なんだそれ?」
俺は、再び背凭れに寄りかかながら、ふんぞり返るように座り、足を組んだ。
その姿を、行儀が悪い、と兄である俺にお構い無しに、俺の姿勢を正しながら
「だって、本当なんだもん」
と言う。
その声は、さっきまでの俺の表情を思い出して、と言うよりは、公共物である列車の中での兄の行為を咎めるかのようだった。
こういう時、どっちが兄でどっちが弟なんだか分からなくなる。
「だからどういう意味だよ」
姿勢を正した俺は、少し反省しているかのような声色で、先程より少しトーンを抑えて、訊ねた。
「兄さんは気付いてなかったのかも知れないけど、外を見ながら、いろんな顔をしてたんだよ」
俺に倣って、アルは長時間座っていた椅子から少し姿勢を直しながら言った。
感覚神経を削がれた鋼鉄の鎧のその仕草が一瞬、
長時間同じ姿勢で居る事と、時折不快にさえ感じる振動から、逃れようとするかのように感じられる。
それは、肉体を持っていた頃の名残なのだろうか。
「い、いろんな顔って?」
自分の知らざる癖を、初めて認識し、少し戸惑ったが、気付かれまいと先を促した。
「えっと、驚いてみたり、笑ったり、怒ったり・・・優しい顔が一番多いかな?」
アルは思い出すように、顎に人差し指を当てて、斜め上に視線を向け、一頻り言い終わるとそれを俺に合わせた。
「一体何を考えてたの?」
呆気に取られていた俺を無視して、長年の疑問をぶつけるようにアルは訊ねてきた。
「え、あぁ・・・別に何も。多分、景色に見入ってたと思うけど、
あんま気にした事ねぇし・・・
って言うか、そんな顔してたこと自体今まで知らなかったし」
正直、驚きの方が隠せなかった。
本人も気付かない、無意識の内に表情に出ていたらしい。
「百面相みたいで、見ているこっちは面白いけどね」
からかう様に言ったが、今の俺にはどうでもよかった。
「いつかウィンリーが言ってたよね、『列車の旅なんてどこが楽しいの』って」
突然、話の話題が変えられたが、俺は上の空で、その直接の意味を理解するだけで精一杯だった。
「確かに言ってたな。で、それがどうした?」
俺は、素っ気無い、感情の篭っているんだかいないんだか、よく分からない、曖昧な返事しか出来なかった。
「だから、列車の旅のいかに楽しいのかって事!」
普段は、頭の回転は速い方だが、いざ自分のこととなると、こうまで頭を捻ってしまうものなのか。
「僕は、そんな兄さんの百面相を見てるのが好きだなぁ」
そんな俺に悪びれもせず言うアルの顔が、にこっと微笑んだように見えた。
「ば〜か、何言ってんだよ。慰安旅行じゃあるまいし」
そんなアルを直視出来ず、そう言うと、ぷい、とまた、頬杖をつき視線を窓の向こうに向けてしまった。
その間も外の景色はくるくると回っていて、外では夕焼けが世界を染め始めていた。
それは例外なく、全ての色を支配していく。
『今度は赤く染まった俺の顔を見て、アルはどう思うのだろう。』
これが、只の夕陽の色だけではない事は、この際言わないでおこう。
ずっと、アルは俺の事を見ていたのだろうか。
俺はずっと、アルを見ていたのだろうか。
眼に映る全てと重ねるように。
まだ沈みかけているというのに、まるで周りを急かす様に、一際輝く星が姿を現した。
燃えるような陽の色が、まるでその星を包み込むかのように見える。
そして、その輝きが一層増す頃には、陽の色は、星に全てを預けるように、姿を変えてゆく。
まるで包まれてゆくかのような陽の色は、先程とは対照的な存在。 お互いが包み、包まれ。
優しく、そっと、お互いの色に染め上げる。
アルがいれば全て。
全てはアルの為に。
結局何かが楽しいんではなくて、辛くても、お前が一緒なら、それでいい。
追い求めるものは一つ。
全てはその一瞬の為に。
***
息吹はくるくる変わる景色が好きで、電車や車ん中ではずっと外ばっか見てます。
そんで色んな事、考えに耽っています。
エドもそうかなぁって、そんで考える事はアルの事なんだろうと思って。
暗めにしようと思って、冒頭の詩を書いたんですけど、結局中身がいつも通りになっちゃった。
初アルエド(エドアルかなこれは?って言うか初ハガレン)だし、指向を変えてみようと思ったけど、徒労と帰してしまいました。
一体何を書きたかったんだか。
あちこち手を出しすぎて、結局何の纏まりも無い物になってしまった。
最初は単純に「列車の旅」だったんだけど、
書いてるうちに、「お互いの存在」みたいな感じに???
苦し紛れの、締めの詩・・・
精進したいです(泣)
5.Mar.2004 MumuIbuki
ブラウンザでお戻り下さい
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