湯煎






      「あぁぁ゙ウィンリィさん!ダメですよ、チョコレートをお鍋にかけちゃっ」

       コンロの前で仁王立ちの格好でお鍋の中身を一心不乱に掻き混ぜていたウィンリィを止めに入ったシェスカは、慌てて火を止める。

      「え〜何でぇ?チョコを溶かしてって言ったのシェスカじゃない」

       プスプスと不吉な音を発しながら焦げ臭い匂いを放つ物体に成り下がった鍋の中身を一瞥して

      「チョコレートは湯煎で溶かすんですよ」

      とシェスカは木杓子でその物体をつつく。もはや使い物には到底ならない。

      「そんなの聞いてないよ」

       さも当然のように言い切るウィンリィをシェスカはげんなりと言った表情でちらっと窺い溜息を一つ吐いた。







       セントラルにいるシェスカを連絡の一つも無しに突然訪ねてきたウィンリィは両手に紙袋を抱えていた。

       何事かと伺う間もなく、チョコレートの作り方を教えてくれと懇願してきたのは数時間前の出来事である。







      「よし、ユセンね!」

       シェスカが使い物にならなくなった鍋を片付けようと手を掛けた時、ウィンリィはボウルに山のように盛られたチョコレートにお湯を注ごうとしていた。

      「ち、違いますー!!」

       シェスカが嘗て無いほどの素早さでウィンリィからやかんを奪い取る。

       ウィンリィはそんなシェスカをぶーたれた表情で見ている。

      「じゃあユセンって何よ?」

      「…ウィンリィさんって本当に、機械鎧以外全く無能ですね」

      「そんなこと無いわよ、アップルパイは得意なんだから!」

      「…アップルパイだけ」

      「え、何シェスカ?」

       ぼそりと言った最後の台詞だけ聞こえなかったのか、ウィンリィは自慢げな様子で聞き返す。

      「なら、この際アップルパイにしたらどうですか?」

      「えーバレンタインって言ったらチョコレートでしょう?ほら、ユセンの方法を教えてよ!」

       そう言ってウィンリィは傍にあったミネラルウォーターのボトルを手に取った。

      「言ってきますけど、お湯が駄目なら水から沸かすんじゃないですからね…」




       行き先を案じ、一人大きな溜息を吐くシェスカだった。







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      私はアニメ版を碌に見たことが無いので知らないのですが、先日カラオケで二人のキャラソンを聞かせてもらって、仲良いのかなぁと思ったら浮かんだネタ。
      シェスカは作ったことは無くてもレシピなら暗記してそうなので、それを狙ってウィンリィが訪ねてきました―って設定。
      ここまでウィンリィが料理音痴だとは思わないけど。

      Feb.13.06 息吹・拝


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      拍手SSの転載です。

      ネーミングセンスまるでなし…

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