折角二人きりの時間だったのに私は家に着くまでの間ずっと黙ったままだった。
家に帰るとお父さんとお母さんが出迎えてくれ、そのままお兄ちゃんの卒業祝いと称してご馳走を食べた。
家にしてはいつもよりずっと豪華だったのにその日私は全然喉を通らなかった。
「今日で部屋がヒカリともお別れだな」
その夜寝る前にお兄ちゃんが突然言い出した。
「・・・・・・・・うん・・・・・」
これがとうとう最後だと思うと、それ以上何も言えなかった。
「このキズ覚えてるか?ヒカリがまだ小さい時にケンカして作ったキズなんだぞ」
・・・・・
「俺たちも随分大きくなったもんだな」
私にはお兄ちゃんが何を言いたいのか良く分らなかった。
「さっ寝るか」
そう促してお兄ちゃんは電気を消した。
「お休み」
「おやすみ・・・」
このすぐ下にはお兄ちゃんがいるのに明日にはいなくなってしまう。
そう思うと涙が止まらなかった・・・。
翌朝、私は今日から(今日からはいらなくない?>でも文脈がおかしくなちゃうよ?)一人で学校に通うことになった。
いつもは隣にお兄ちゃんがいるハズなのに・・・。
もう学校を歩いていても会うことは無い・・・。
その日は一日中そんな事ばかりを考えていた。
放課後すぐに家に帰ると、もう部屋の移動は終わっていた。
私は誰にも悟られないよう普通を演じていたけれども、やっぱりお兄ちゃんを騙し抜くことは出来なかった。
しきりに「どうしたんだ」とか「悩みがあるなら言え」とか言ってくれたけれども私は「何でもないよ」としか言えなかった。
もし本当の事を言ったら・・・優しいお兄ちゃんは悩むだろう。
私がこんな気持ちになったのは自分のせいだと思い、自分を責めるだろう。
そんなのはダメ。お兄ちゃんを苦しめるなんてダメ。
絶対に言えない・・・。
私の苦く切ない初恋・・・。
あぁ、どうして私はお兄ちゃんの“妹”なんだろう?
どうして“同い年”じゃなかったんだろう?
空さんが羨ましい・・・・・。