普通クリスマスと言えば、誰でも一番大切な人と過ごしたいと望むだろう。
「家族」「恋人」「友人」?
俺はまだ好きな娘とかいないし、子ども同士でやるのもいいけど、皆家族がいるし・・・
今年はどうなんだろう。
「ヤマト、悪い!」
帰宅早々、親父がそう言って突然謝ってきた。
いくら自分が悪くても謝らないアノ頑固親父が。
「おっおい何だよいきなり?一体どうしたんだよ、親父らしくも無い」
その言葉に些か腹を立てた様だったかそんな事よりも大切な事だったらしい。
「実はな、今年のクリスマスも仕事が入っちまってよぉ。すまんな」
予想外の返答に呆気に取られた。
「何だそんなことか。いつもの事じゃんか、夜一人なのは」
「何を言ってるんだ!今世紀最後のクリスマス位可愛い息子と過ごしたいじゃないか」
何てガキな親父なんだろう。コレじゃあどっちが子どもなんだか・・・
「クリスマスって言ったて、家はクリスチャンじゃないだろ?それに俺はもう小6だぜ?別に特別なことしなくたって」
「何だよ、可愛くないな。昔はあんなに可愛かったのに。サンタクロースも本気で信じたたんだぞ?あぁあの頃は良かった」
全くこの親父は・・・
別に期待していたわねじゃ無い。
親父が忙しいのはいつもの事だし、クリスマスなんか特にそうだ。
でも・・・少しだけ、ほんの少しだけ期待していたのに・・・
「おーいヤマトー」
聴きなれた声に振り返る。
「おう太一」
今日はやけに嬉しそうだな。
「オッス。何だよお前朝から暗い顔して」
今日に限って"カン"の鋭い奴だ。
「・・・別に・・・。お前は嬉しそうだな」
待ってましたとばかりに笑顔を作る太一。
「だってもうすぐ終業式じゃんか。そしたらすぐにクリスマスだぜ!」
・・・クリスマス・・・
「ガキじゃあるまいし。俺らもう小6だぜ?」
また心にも無いことを言ってしまう。素直になれない自分が憎い。
「何だよ可愛いくないなぁ」
どっかで聞いたような聴いたような台詞。
「今年は母さんが又ケーキ作るって張り切ってたからなぁ。ほら春休みから嵌っちゃってるんだよ。
「今度こそ成功するぞ!」って張り切っちゃてるんだよ」
そう言えば春休みに失敗したって言ってたな。
「それに・・・。それにクリスマスには"サンタクロース"がプレゼントを持ってきてくれるしな!
今年は何をくれるんだろうな?」
っておい!こいつ小6になってもまだサンタクロースを信じているのか!?
小3になったタケルでさえ薄々感ずいてるって言うのに・・・。
「そっそりゃ楽しみだな・・・」
苦笑いしながら俺は答えた。
太一(こいつ)には悩みなんかなさそうだなぁ。
「んで、今年はヤマトは誰と過ごすんだ?俺は勿論家族だけだけど」
「・・・一人だけど?」
なるべく平常心を心掛けて言った。
「一人かよ?何だよ親父さんは?」
予想通りの反応。
「何だよ、そんな大声出して。親父は仕事だよ。いつものことじゃんか」
段々イラ付いてきた。
「仕事って、クリスマスくらい休めなかったのかよ?」
・・・俺だって・・・
「仕方ないだろ、大人には大人の事情ってモンがあるんだよ」
それは自分自身に言い聞かせるような言葉だった。
「そうかぁ、一人かぁ・・・」
俺はこの時、太一の意味ありげな言葉に全く気付かなかった。
帰りにお台場に設置されたクリスマスツリーを見た。
美しく優しい光だったが、この時の俺には何故かとても切なく感じた。
日一日と寒くなり、遂に終業式の日となった。
「ヤッヤマトォどうだった?」
放課後、顔面蒼白の顔をした太一がわざわざ別のクラスの俺のところを訪ねてきた。
こりゃ相当悪かったんだろうな。
「あぁ、"まぁまぁ"だったんじゃないか?」
太一の表情が少し明るくなった。
「なんだ"ヤマトも悪かった"のかぁ!なぁ見せっこしようぜ」
「否、やめておこうぜ。こういうものは見せ合うもんじゃない」
太一の事を思うと、こう言うより仕方が無かった。
「何だよけち臭いなぁ、"お互い悪い"んだからいいじゃんかよ!」
そしてそう言うと抵抗する俺を撥ね退け、俺の通信簿を奪った。
俺は仕方なく太一のを受け取り見てみた。
・・・激悪・・・
「・・・たっ太一?・・・」
太一の表情が見る見るうちに蒼くなっていった。
「何だよこれ!ヤマトなんてキライだぁ〜ぁ〜〜(エコー)」
そう言って太一は涙声で逃げていった。
「だから言ったのに・・・」
俺は・・・まぁまぁだった。
4が1つか2つ。
あとはオール5。
太一を思ったつもりだったが、まさか"太一"に『よかった』なんて言えないし。
まぁ体育以外アヒルさんだった太一にはい刺激になったかもな。
「じゃあヤマト、戸締りはしっかりするんだぞ。知らない人は家に入れるなよ。
お前は"俺に似て"かっこいいから誘拐されるといけないからな」
いつもは何も言わないくせに。
「"親父に似て"が余計だよ。ほらほらさっさと行けよ、遅刻するぜ」
全くこの親父は・・・。
「おっヤバイ。じゃあ行ってくるからな。ごめんなヤマト」
そう言って、親父は出勤した。
今日はクリスマス特番らしく、いつもにも増して忙しいらしい。
「全く、どっちが子ども何だか」
急に静まり返った部屋に一人になった。
「・・・暇だし、寝るかな」
折角の冬休みに寝るのは勿体無いが、することも無いし、起きていても色々と考えてしまいそうだったから・・・。
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