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弱さ
夕暮れに染まる校舎。
静まり返った廊下を軽快に走る足音がひとつ聞こえる。
その足音はある教室で止まると一息ついて勢いよくドアを開いた。
その教室では、真っ赤に染まった夕陽を浴びた一人の少女が、忙しなさそうに書架の整理をしていた。
「全くもう!ジェンったら、今何時だと思ってるの?」
私は不貞腐れた顔つきで、しかし少し笑顔を綻ばせながら、前にあった、正方形に並べられた長机を回り込み、ドアの所に立っているジェンに向かって歩き出した。
「悪い悪い」
ジェンは謝る仕草を見せるものの、反省の色が見えないようないつもの口調で、私の持っていた本を取った。
「これいつの?」
ジェンは不思議そうな顔つきで尋ねた。
無理も無い・・・と思った。
「さぁ?奥の方に入ってたから」
「樹莉は相変らず真面目だね。こんな昔のファイルまで整理するなんて」
「何言ってるのよ」
私は呆れた口調になった。
「書架の整理をしてって言ったのは、生徒会長であるジェンでしょ?
私はジェンを待つ間に、それを全て終わらせてしまって、そっちにまで手を出す程待たされたんだから!!副会長だって、そんなに暇じゃないんだからね!」
私は誰から見ても怒っているように見えただろう。
もちろん、そのつもりだけど。
「ごめんごめん」
案の定、そう言ってジェンは私の髪を優しく撫でてくれる。
ジェンは優しい。
優しくて、頼り甲斐がある。
でも、普段からこうではないのがジェンの唯一の・欠・点かも知れない。
「どうせ他の娘にもこんなことしてるんでしょう?」
さっきも言ったけど、ジェンは優しい。
だから、老若男女にもてる。
そんなところが、欠点なんだと思う。
「樹莉にしかしてないよ」
ジェンは相変らずニコニコしながら私の髪を撫で続けている。
私はその手を振り払って「どうだか・・・」と言った。
ジェンは肩を竦め、持っていたファイルを書架にしまうと「では樹莉姫、帰りましょうか?」と、相変らずの口調で私を促した。
私も仕方なしに「苦しゅうない」とか言ってみる。
するとジェンは笑い出し、私も一緒になって笑ってしまった。
校舎を出る頃には、夕焼けは何処かへ消えていて、その代わりに月が、私達を暖かな光で包み込んでくれた。
私とジェンは友達以上恋人未満の関係。
ジェンはよく私に構ってきては『可愛い』と言ってくれるけど、それは何だかジェンにとっての社交辞令のように聞こえて仕方が無い。
だって、ジェンはいつでも、誰にでも優しいから。
翌朝、私はどんな生徒よりも早く学校へ向かった。
そして、教室に行く前に生徒会室へ寄った。
昨日の資料の整理がまだ途中だったからだ。
そのままにしておいたら今日の会議に影響が出てしまい、そうしたらまたジェンに迷惑をかけてしまうから。
「あれ・・・?」
昨日きちんと確認した筈の生徒会室の鍵が、なぜか開いていた。
私は恐る恐る中の様子を窺った。
・・・誰もいない?
私は1〜2歩、教室内へ足を踏み込んでみた
「おはよう、樹莉!」
突然、何者かに後ろから抱きつかれた。
私はこれ以上は出ないんじゃないかってくらいの叫び声をあげた。
あまりにも突然の出来事で、頭の中で何が起こったのか判断が出来ない程だった。
その人は慌てて私の正面に回りこむと「オレだよオレ!!」と言って私を制止した。
落ち着いて彼を見ると、その正体はジェンだった。
「何てことするのよ!」
私はジェンの胸を一発叩いた。
しかし、想像以上にジェンの体は逞しく、私が叩いたくらいじゃびくともしなかった。
「ごめん、ごめん。まさかそんなに驚くとは思わなかったから」
ジェンは相変らずの反省してるんだかしてないんだか曖昧な態度で、私に謝った。
「ごめんじゃないわよ、殺されると思ったんだから!」
「まさか。学校に殺人鬼が忍び込んだりしない限り・・・」
いつも強気なジェンの口調が、段々静かになり終には消えてしまった。
私が泣き出してしまったから・・・。
「そんな、何も泣かなくても!!」
私より背の高いジェンは私の背丈に合わせて屈み、私の顔を覗き込み慌てて言った。
私は無言で首を横に振った。
私がいつまで経っても泣き止まないのを知ると、ジェンはハンカチを取り出し、それを私に渡すと、書類の整理を始めてしまった。
・・・優しいんだか、優しくないんだか。
結局ジェンは、肝心な所で何もしてくれなかった。
別に、何かを期待してた訳ではないけど。
ジェンが一通り整理を終えた頃、私の涙も途切れ始めていた。
「泣き止んだ?」
ジェンがいつもの様に優しく私に問い掛ける。
「知らない」
私はわざと素っ気無く答えた。
「そんなに怒らなくても・・・」
ジェンは申し訳無さそうに言った。
「でも・・・樹利の泣き顔も可愛かったよ」
あまりにも突拍子もないことを言うものだから、私はそっぽを向いてたのにジェンの顔を覗き込んでしまった。
私の顔を見て、またジェンは嬉しそうに私に笑い掛けた。
「何よそれ、どういう意味?」
私は逆に、ぷーっと膨れ面になってしまった。
ジェンは私の頬っぺたを摘むと「だって、樹莉は人前では絶対泣かないじゃん」と訳の分からない事を言った。
「何それ?」
私はジェンの手を振り払いながら、怪訝そうな目でジェンを見詰め返した。
「いつも見せない弱さを見せたから、オレって樹莉にとって特別なのかなって」
ますます意味が分からなかった。
「何か、逆に嬉しくてさ」
珍しいことに、あの自信家のジェンが言葉を詰まらせた。
「こういう部分持った樹莉も、好きだな」
ジェンの思いがけないに私はずっと伏せていた顔を持ち上げた。
するとジェンもこちらを向き、そっと肩を抱いてくれた。
少しずつジェンの顔が近づいてきている、そんな感覚に襲われ、思わず瞼を閉じてしまった。
「ジェンここ〜?」
勢いよくドアを開けて生徒会室に入ってきたのは啓人君だった。
私とジェンはとっさに離れ、何事も無かったかのように装った。
啓人君が何か不思議そうな顔をしていたのを見て、私とジェンは何かを思い出したかのように笑い出してしまった。
***
終わり。
これ以上続けると、本当に収拾つかなくなるから。
一応ティーンズ系恋愛小説ってネタだったから、一人称で進めてみました。
何か、同人始めた頃に戻ったみたい。
最初、絶対に一人称で進めるって決めてたのに、何事も無かったかのように三人称で始めてしまったのはいい思い出です(記憶昇華)
起承転結で言うと、起承転までは、結構思い通り書けたんだけど、結末がどうにもこうにも・・・
あっちこっち手を出し、挙句に何の事件も起さなかったから、何を纏めたらいいのやら。結末書けへんやん
樹莉とジェンは書いてて楽しかった。
特にジェンは、私の中ではナルとして設定されているから余計。
でも、駄文の中のジェンは異常。
私が書くと妙に偽者になるのは何でだろう(振り付き)
あぁ、表現力って大切ですねぇ。
管理人:夢萌
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