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それは、突然の出来事だった。 和谷自身、あまりの突然さに、その場に棒立ちになってしまった。
デート
院生研修が終わった後、帰り支度をしていたヒカルの元に、和谷が、周りをキョロキョロしながら、やって来た。
和谷の不自然な動きに首を傾げていると、和谷がヒカルに近づき、そっとある紙を渡し、
「実は遊園地のタダ券が有るんだけど、2枚しかなくてさぁ・・・今度の日曜、二人で行かないか?」
と、和谷が小声で言った。
その時、控え室に人が入ってきて、和谷はヒカルに券だけを渡し、
「じゃあ、10時に入場門で」と言って、そそくさと帰ってしまった。
(どうしよう・・・この券・・・)
帰り道、ヒカルは和谷から渡された券を見詰めながら、歩いていた。
その日は特に予定があるのではなかったが、ヒカルはあまり気乗りしなかった。
(大体、おれの意見まるで無視じゃんか・・・)
(いつもいつも主導権は和谷だし・・・)
ヒカルは和谷と遊園地に行く事ではなく、和谷の強引さに少しの怒りを覚えていたのだ。
そして約束の日曜日となった。
しかし、ヒカルは9時になっても中々支度をしようとはしなかった。
10時を少し過ぎ、玄関口で世間話をしている母親達をボーっと眺めていた。
すると、自宅の電話の音が聞こえてきた。
ヒカルが、(もしかして)と思っていると、母親が部屋に入ってきた。
「ヒカル、和谷君からお電話よ」
そう言って、ヒカルに受話器を渡すと、母親はまた、玄関に降りていった。
母親がまた喋り出すのを見て、ヒカルは漸く電話に出た。
「もしもし、進藤か?お前何やってるんだよ?約束の時間をもう15分も過ぎてるのに、まだ家にいるのかよ?」
受話器から聞こえてくるのは、いつもの和谷の声だった。
しかし、どこか不安そうに聞こえた。
「何って、お母さん達のお喋り見てた」
ヒカルは、知ってか知らずか、和谷とは対照的に素っ気無く答えた。
「何だよそれ?今日、遊園地に行こうって言ったの忘れたのかよ?」
和谷は少し強張った声だった。
「えー覚えてるよ」
「じゃあ何で来ないんだよ?」
「だっておれ、行くなんて一言も言ってないじゃん、和谷が勝手に券を押し付けて・・・」
しかし、受話器からは何の応答もなかった。
「和谷・・・?」
少し度が過ぎたかなぁ、とヒカルは心配そうに問い掛けた。
「・・・和」
もう一度問い掛けるか否かに、電話は途切れてしまった。
その時、ヒカルに初めて後悔が襲ってきた。
和谷が強引なのはいつもの事で、それはヒカルに自分のことを見ていて欲しいと思うからであったからだ。
ヒカルは、何となく和谷の気持ちを理解していて、その和谷の強引さに、どこか心地良さも感じていたのだが、今回は何故か、我侭を言ってみたくなったのだ。
しかし、その我侭が、結果的に和谷を傷付けてしまった事に、ヒカルは今更ながらに気付いたのだ。
ヒカルは急いで支度を済ませ、気付いた時には階段を、物凄い勢いで、駆け下りていた。
その様子に、母親は、何事かと思い「ヒカル!」と叫んだが、今のヒカルにそんな言葉は届かず、そのまま走って行ってしまった。
ヒカルは遊園に着くまでの間、このまま和谷との関係が壊れてしまうのではないかと、不安で一杯だった。
そして、自分の犯してしまった行為と和谷への思いが後押しをして、ヒカルは、自分では気付かなかったが、いつもより早く走っていた。
約束の時間をとうに過ぎ、ヒカルは漸く約束の場所へと着いた。
日曜日ともあって、見渡す限り人込みが続き、小さなヒカルにとって、和谷を探す事は困難に近かった。
ヒカルは不安な表情を浮かべながら、必死に和谷を探した。
どれだけの時間探したか、全然分からなかった。
もしかしたら、さっきの電話の時に帰ってしまったのではという不安感がヒカルを襲った。
ヒカルは居た堪れなくなり、その場を後にしようとした。
ふと、端に目をやると、そこにはずっと求めていた、和谷の姿があった。
ヒカルは何の躊躇もせずに和谷の元へ飛び込んでいった。
和谷はヒカルが突然目の前に表れた事に、驚きを隠せずにいた。
「し・・・進藤、どうし」
言い終わらないうちに、ヒカルは和谷に抱きついた。
それはヒカルが普段見せない行為だった。
そんなヒカルの姿に、和谷は余計に慌ててしまった。
「和谷、ごめんね。おれ・・・」
慌てた様子の和谷をお構い無しに、今にも泣きそうな顔のヒカルは、和谷を見上げて言った。
「おれ、和谷に酷い事した」
いつの間にか、ヒカルの瞳には大きな涙の粒が溜まっていた。
「もう帰っちゃったんじゃないかって、すごい不安だった」
その涙はヒカルの頬を伝い、流れ落ちた。
それはまるで、和谷に逢えた事で、不安感が和らいでいった事を象徴するかのようだった。
そんなヒカルの様子に、和谷はくすぐったい気持ちになった。
和谷はヒカルの涙を拭い、そっと微笑みかけた。
ヒカルも、和谷の笑顔に安心したのか、最高の微笑を、和谷に見せた。
「そう言えば、どうして和谷はあそこにいたの?」
改めて遊園地に入り、幾つかのアトラクションを満喫した後、ヒカルは思い出したかのように和谷に問い掛けた。
「う〜ん、何か進藤なら来るんじゃないかなぁって思ったから」
お土産コーナーにあった見本の帽子を、ヒカルに被せながら、和谷は答えた。
「何それ?」
ヒカルは抵抗しながら、怪訝そうな顔で、また問い掛けた。
「現に進藤はこうして来てくれたじゃん」
ニコニコ笑いながら答え、抵抗するヒカルを制止し、和谷は強引に帽子を被らせた。
「それじゃ、和谷はおれの事試してたの?」
和谷の発言に抵抗する事を忘れ、ヒカルは少し声を尖らせて言った。
「そう怒るなよ。別に全てが狙い通りだった訳じゃねぇよ。
まさかすっぽかされるとは思っても見なかったし」
そう言うと、ヒカルは少ししょげてしまった。
「だから、今日一日俺の我侭聞いてもらうもんな!」
和谷がさらりと言うと、ヒカルは驚いた表情を見せた。
「うん、その帽子進藤に似合うな」
ヒカルの事はお構い無しに、和谷は満足そうにヒカルを見ていた。
ヒカルは慌てて鏡を覗き込むと、大きな耳の生えた帽子がすっぽりと自分の頭に納まっていた。
「何だよコレ?!」
ヒカルは鏡に映る自分に向かって叫んだ。
「可愛いだろ?進藤に良く似合うよ!」
「似合うじゃないだろ?バカにしてるのか?」
ヒカルはむっとしながらも、決して帽子を脱ごうとはしなかった。
「まさかぁ」
和谷があまりにも真剣な目をして言うので、ヒカルは、赤くなった顔を隠すかの様に、とっさに下を向いてしまった。
「じゃ、罰として、それ買ってやるから、一日被ってろよ」
「えっ?!」
ヒカルの意見など聞かずに、和谷はそのままお金を払い、店を出てしまった。
ヒカルは慌てて和谷の後を追った。
***
著作権の都合、何処とは書かなかったけど、希望としてはTD○で。
ラスト微妙な感じに終わっちゃったけど、一応、普段の関係に戻ったって事を言いたかったんです。
ヒカルの帽子姿、可愛いだろうなぁ(萌)
今回は、ヒカルが和谷を試した〜みたいな感じで書きたかったんですが、やっぱ微妙ですね。
どうしたら可愛く書けるのか教えて欲しいです。
そして、よくよく考えてみると、日曜日って院生研修の日じゃないっけ??
管理人:夢萌
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