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1日が終わり、みな部活に精を出す時刻となった。
校庭からは生徒たちの声が聞こえてくる。
聞こえるのは小さな声だけれども、校庭から程遠いこの教室にも聞こえてくる程。
ORIGIN〜始まり〜
校庭から聞こえてくる生徒たちの声以外、物音しない教室。
時折碁石の音が響くだけだ。
あかりがいつものように理科室に来て、早30分が経とうとしている。
あかりは囲碁部ではないが、ヒカルが毎日ここに通っている為、
彼女にとってもここへ来るのが日課になっていた。
しかし、今日に限ってヒカルは一向に姿を現さなかった。
その間、先輩である筒井が棋譜を並べるのを見ていたが、
囲碁のルールを知らないあかりにとって、それは退屈なものでしかなかった。
「ねぇ筒井さん、今日はヒカル、来ないんですか?」
あかりはとうとう痺れを切らして、真剣に碁盤に向かう筒井に話し掛けた。
今までも何回か話し掛けようとしたが、そんな筒井には話し掛け辛く、あかりはずっと耐えてきた。
あかりは何度も、『囲碁のどこが面白いのか』と思っていた。
そして、あまりの退屈さに耐えられなくなったのだ。
「さぁ、僕にも・・・きっと3人目を探してるんじゃないかな?」
筒井は碁盤ばかりを見るだけで、あかりの事など全く見ることなく答えた。
勿論、筒井には悪気など全くなく、3人目を探すことに無関心なわけではない。
ただ、一つのことに熱中してしまうと、どうしても周りが見えなくなってしまうのだ。
しかし、あかりは筒井の性格など知る筈も無く、上の空の筒井の様子に、微かに怒りを覚えたのだった。
「ねぇ、筒井さんはヒカルがいなくてもいいんですか?」
あかりは退屈さに飽き、悪いと思いながらも、また打ち始めた筒井に話し掛けた。
「まぁ、来る来ないは本人の自由だからね」
普段からは想像だにできぬ言葉を放ち、筒井はまた続きを始めた。
あかりはこれ以上話していても無駄だと思い、理科室から出て行こうとして、扉に手を掛けた。
「あれ?藤崎さん、帰っちゃうの?」
さっきまで碁盤にかじり付いていた筒井は、この時初めてあかりの顔を見た。
「・・・藤崎さん、どうしたの?」
筒井が疑問に思うのも当然で、あかりは今にも泣きそうな顔をしていた。
「あ、僕がずっと藤崎さんの話を聞いてなかったから・・・」
筒井は、あかりが泣きそうなのは自分の所為だと思い、慌ててあかりの側へ駆け寄った。
「ごめんね、藤崎さん・・・」
先程の様子とは一変して、筒井は急に親切になった。
その様変わりが、あかりには逆に気持ちを昂ぶらせた。
「だって、筒井さんっていつもはすごく親切なのに、
碁の事となると人が変わっちゃうみたいで」
あかりは、後ろめたさがあるのか、下を向いたまま話し始めた。
「ごめんね。僕って一つの事にしか集中できない性質で・・・」
「いいえ、それはいいんです!けど、何か最近、ヒカルも碁を始めてから良く分からなくなって・・・」
あかりは筒井を遮って話し始めた。
「碁を始めてから、何かヒカルが変わっちゃたみたいで、それまではそんなこと無かったのに、
何かヒカルに置いて行かれちゃうみたいで不安なんです。
今日だって、ヒカルったら一度も顔を見せないし・・・」
あかりの声がどんどん小さく、震えていくのが筒井にも分かった。
しかし、筒井にはうまい言葉が思いつかず、あかりの側に立っている事しか出来なかった。
「碁のどこが面白いんだか、私にはさっぱり分からない!」
あかりは、何かに訴える様な声で叫んだ。
その声は、静かな教室に響き渡り、そして、静かに消えていった。
こんな事を筒井の前で言ってはいけない事は、あかりも重々承知だった。
しかし、こみ上げてくる“何か”に、あかりは逆らえずについに言葉に発してしまったのだ。
そして、自分の暴言と、自分の感情を堪え切れず、
あかりはとうとう泣き出してしまった。
その間、筒井は黙ってあかりの側にいた。
校庭からは、生徒たちの声が聞こえなくなってきた。
もう、大半の生徒が下校する時刻となったのだ。
夕日は傾き、理科室もその影響で真っ赤に染まっていった。
あかりもやっと落ち着いてきたのか、時折涙を拭う仕草を見せた。
「ごめんなさい、筒井さん・・・」
隣に座って考え事をしていた筒井は、はっとして、あかりの方を向いた。
「もう大丈夫なの?」
筒井は怒った素振りなどせず、優しくあかりに問い掛けた。
「はい」
その言葉に安心したのか、あかりは微かに筒井に笑いかけた。
「よかった」
筒井もあかりに笑いかけた。
その笑みはあかりとは逆に満面の笑みだった。
「・・・」
その表情に、あかりは俯いて話し始めた。
「ごめんなさい、筒井さん。あんな事言っちゃって・・・」
あかりは、自分勝手な発言で、筒井を傷付けたのではないかと不安だった。
「いいんだよ」
しかし、筒井は、あかりの予想とは裏腹に笑って答えた。
「・・・え?」
あかりは、そう言って立ち上がった筒井を見上げながら、驚いた表情を見せた。
「ねぇ、藤崎さん、藤崎さんも碁を始めてみたら?」
筒井の発言に、あかりは声も出なかった。
「ずっと考えてたんだけど、そうすれば少しは進藤君の気持ちも分かると思うんだ」
淡々と話す筒井に、あかりは黙って聞いていた。
「進藤君を待つよりも、自分で追いかけてみた方が、きっと理解できると思うよ」
筒井は話しながら進み、真っ赤に染まった夕日が見える窓際に立った。
「理解できなくてもいい、追いかけてみる事に意義があると、僕は思う。
何事も、待ってるだけじゃ何も解決出来ないんじゃないかな?」
筒井は、振り返りながら言った。
筒井の後ろには燃えるような赤が広がって、眩しくてあかりは筒井を直視できなかった。
「今日はすみませんでした」
筒井が理科室の鍵を閉めている側に立って、あかりは深くお辞儀した。
「いいんだよ、僕も悪かったんだし」
筒井は一瞬鍵を掛ける手を止めたが、また鍵を閉め始めた。
「いえ、ヒカルの事・・・」
あかりは、恥ずかしそうに、小さな声で言った。
筒井は立ち上がってあかりの方を向き、微笑んで見せた。
「じゃあ、また明日」
「はい!」
筒井がそう言うと、あかりは嬉しそうに答えた。
***
久しぶりに書きたい衝動に駆られた駄文でした。
にも関わらず起伏の無い話ですね。
まあ、私の書いたものなんてこんなものですから。
共感して頂けたら幸いです。
ちなみに、ラストの、眩しくてあかりが筒井さんのこと見れなかったのは、
本当に眩しかっただけで、
あかり×筒井では決してありません。
敢えて言うなら、ヒカルへと続く希望の光です。
しつこいですが、例え一回も出てこなくても、これはあかヒカなんです!
月に突っ込まれたので訂正しておきます。
眩しくてあかりが筒井さんのことを見れなかったのは
筒井さんの囲碁への情熱さ故です!!
これでいい?!
管理人:夢萌
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