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Happy Holiday
12月に入ったばかりだと言うのに、街中が日を追う毎に賑やかになっていくのが感じられる。
それは、街だけでなく人々の心も、心なしか期待に胸膨らませている事が、傍からでも感じられる程だ。
それだけ“このイベントが持つ効力”は絶大であり、それは彼にも例外なく訪れていた。
一目見ただけで、「明るい」という言葉が似合いそうな少年が、その代名詞の通り、満面の笑みを浮かべて、イルミネーションに彩られた街並みを駆けて行った。
しかし、少年はイルミネーションに目もくれず、ただ一つ目的のモノを、只管に探していた。
少年は、捜し求めていたモノを見つけたらしく、それに向かって走っていくと呼吸を整えてから、彼よりも一回り小さい少年に声を掛けた。
「いよっ、進藤!」
「あっ、和谷!おはよう」
進藤と呼ばれた少年が振り向くと、和谷は溢れんばかりの笑顔を見せ、彼の隣に並んで歩き出した。
和谷は、さっきの表情とは打って変わって、ヒカルの話をそこそこに、上の空にいた。
普段なら真剣にヒカルの話に聞き入る和谷の態度に、違和感を感じつつも、ヒカルは何事もないかのように話を続けていた。
一体どの位、こうした時間を過ごしたのだろうか。
漸く意を決したのか、和谷は立ち止まり、ふと空を見上げた。
その行動を見たヒカルは、先程から感じていた違和感と共に、怪訝そうな面持ちで和谷を覗き込んだ。
「どうしたの、和谷?さっきから変だよ?」
ヒカルが心配するのも当然で、和谷の行動は普段からは想像も出来ない程だったのだ。
心配するヒカルを見て、初めて自分の行動の異常さに気づいた和谷は、何事も無かったかのように装い、ヒカルに悟られないように、微笑みながら言った。
「もうすぐクリスマスだろ?俺んとこのアパートでパーティーでもしないか?」
さり気なく言ったつもりだったのに、ヒカルのきょとんとした表情を見て、自分があまりにも突拍子の無い事を言ったのだろうと思い、和谷はまた顔が強張りそうになった。
和谷はある程度の覚悟をした。
しかし、それとはまったく逆に、ヒカルは満面の笑みを浮かべながら
「いいじゃん!最初はなんだか分からなかったけど、面白そうじゃん!!」
と、答えた。
その返答に後押しされたのか、和谷も普段通りの表情に戻り、今度は跳ね出したい気持ちを抑えるので必死だった。
しかし、後に続いた言葉に、和谷は、自分の言葉の足りなさに後悔をせざるを得なくなったのだった。
「じゃあ、伊角さんとかも誘って、お菓子なんかも持ち寄って盛大にやろうよ!!」
訂正しようとも思ったが、ヒカルがあまりにも嬉しそうな目をするので、和谷はそれ以上何も言えなくなり、精一杯の笑顔を浮かべて、それを快諾したのだった。
クリスマスが近づくにつれ、益々街中がイルミネーションに彩られ、行き交う人々が心踊らしていくのに反し、和谷は不安になっていった。
また、それには後悔も先立っていた。
ヒカルが嬉しそうにみんなを誘う様を見ると、和谷はいても立ってもいられなくなる始末だった。
そして、仲が良いのか悪いのか、殆どの人は参加すると答えたのだった。
しかし、言い出した手前、後に引くことも出来ず、また、ヒカルが来る事には変わりないのだからと、自分に言い聞かせることしか出来なかった。
クリスマスを数日後に控えたある日、和谷が一人部屋で転寝をしていると一本の電話が掛かって来た。
「和谷か?もしかして寝てた? 」
重い身体をやっと起し、最初に聞こえてきたのは、聞き慣れた伊角の声だった。
また、ヒカルが一番最初に誘ったのも彼だった。
「いや・・・」
そっけない態度で答える和谷を知ってかしらずか、伊角は続けた。
「ところで、俺は何を持って行けばいいんだ?」
寝起きの頭で、伊角の質問を理解できなかったのか、答える必要が無いと感じたのか、
和谷は黙ったまま、携帯電話を片手にさっきまで転がっていた様に、再び転がってしまった。
さっきとは違うのは、何かが和谷の中ではじけた音だった。
「聞いてるのか、和谷?」
和谷が何も答えないのに痺れを切らしたのか、伊角は急かす様な声色で和谷に問い掛けた。
「何でそんなこと聞くんだよ?」
その音は和谷の中で大きく響いたのだった。
「何でって、進藤がおまえに聞けって言ったからだよ」
「・・・進藤が?」
想像もしない人物の名が挙がり、和谷は内心驚きを隠せなかった。
「そう、丁度電話してたところで、何もって行けばいいか聞いたら、アイツ何も考えてなくて・・・」
伊角は和谷の反応を待ったが、答える気配を感じないためそのまま続けた。
「だったら、和谷に聞いた方がいいかと思って・・・」
言い切らないうちに和谷は跳ね起き、いない相手を睨む様な形相で答えた。
「俺に聞いたって知らねぇよ!!」
その勢いに任せ電話を切ると、和谷に言いようも無い感情が襲ってきた。
自分がやってしまった事への後悔と、ヒカルとの関係が壊れてしまうのではないかと言う不安感が。
結局その後、和谷は伊角に電話をしたのだった。
寝起きの所為にして、ただ悪かった、と述べたのだった。
こうなってしまったのは、誰を恨むより自分の責任だと自覚した和谷は、それからは率先して幹事を引き受けた。
ヒカルに代わって持ち寄るものを指示したりもした。
只、自分のアパートが小さいことを理由に、最初のヒカルの提案とは逆に質素に済ませることを除いては。
当日、一番緊張していたのは、もしかしたら和谷だったのかもしれない。
どんな形にせよ、ヒカルとクリスマスを迎えられるのだから。
今となっては、誘った日の自分の挙動から二人きりで過ごすことを考えたら、順序的にも、この方が良かったのかと思ってしまう始末だった。
しかし、一向に誰も来る気配が無かった。
約束の時間はまだだが、例え自分が幹事だとしても、誰か一人くらい来て準備を手伝ってくれてもよさそうなものだと、和谷は考えていたからだ。
しかし、一人暮らしの部屋では、小さいながらも実家から持ってきたクリスマスツリーが空しく点灯する始末だった。
電話しようにも、催促するようで、和谷の変なプライドが許さず、クリスマスツリーと睨めっこして過ごすばかりだった。
外は徐々に冷えてきた。
小さいと言っても、暖房器具が充実していない和谷の部屋は、その影響を直に受けていた。
しかし、和谷にとって、それだけではない事は言うまでも無い。
約束も30分を過ぎた頃、和谷は目を覚ました。
寒さの為に毛布に包まると、つい転寝をしてしまっていたのだ。
『寝てしまっている間に誰か来たのだろうか・・・』
眠い頭を起して、和谷はぼんやりと考えていた。
さっきまで静かな部屋に和谷が起き上がる音がすると、それに呼応するように、ドアの向こうで小さな物音がした。
もし起きていて、何かしらの音を立てていたら決して聞き取れないような、小さな物音が。
しかし、さっきまで寝ていて、物音一つ立てることを知らなかった和谷にとって、それは例外だった。
和谷は、疑う事を知らず、ドアに近づいた。
寝ぼけた目を擦り、ドアを開けると、そこには、頬を赤く染めたヒカルが、ヒカルは少し逃げ腰に立っていた。
和谷は、そこで目を覚まさずにはいられなかった。
「進藤!?何で?」
和谷は、今起きたばかりで、まだ頭の中が幕を張ったように、その状況を理解する事が出来なかった。
「何でって、自分が誘ったんだろ?」
ヒカルは、少し部が悪そうに、そして少しいたずらに答えた。
和谷は、何か言おうともしたが、ヒカルの上目遣いに、何も言葉が浮かばなかった。
「まぁ、取敢えずあがれよ。」
促されるままヒカルが入ると、和谷は
「誰もいないけどな」
と、付け加えた。
その言葉に、ヒカルが小さく反応したのを、和谷は見逃さなかった。
「どうした進藤?」
ヒカルは、真っ赤に染まった頬を、より一層真っ赤にしていた。
まだ頭が上手く働かない和谷は、ヒカルが話し出すまで、何も話し掛けることをせず、立ち止まったヒカルを、そっと再び促したのだった。
ヒカルが畳みに放り出された毛布を手に取ると、今度は和谷に視線を移した。
そんなヒカルを見て、和谷は
「あぁ、寒くて毛布に包まってたらいつの間にか寝てたらしい。そう言えば進藤はいつから来てたんだ?起してくれればよかったのに。すっかり冷え切っちゃって・・・」
と、ヒカルが持っていた毛布を取ると、ヒカルにすっぽり掛けた。
「・・・あったかい」
ヒカルはその毛布に包まると、嬉しそうな表情を浮かべて、和谷に笑い掛けた。
和谷は、そんなヒカルの表情に対して照れ隠しをするように、『ココアでも作る』と、言って台所へ行ってしまった。
「そう言えば進藤、お前どのくらい待ってたんだ?」
和谷が台所へと消えてしまうと、聞きやすくなったのか、ヒカルに問い掛けた。
ヒカルはそっと、小さな声で話し出した。
「そんなに待ってないと思うよ。」
「思うって、だったら何で起さなかったんだよ?そんなに待ってないって言っても、この寒空だぜ?」
「だって、和谷が寝てるって気付いたから、起しちゃかわいそうかなって・・・」
そう言うヒカルだが、しかし、その声は少し浮ついていた。
「だからそんなに頬を真っ赤にしたんだよ」
そう言いながら、和谷が部屋に入ってくると、ヒカルにココアの入ったマグカップを渡した。
それを受け取ると、ヒカルは嬉しそうにココアを頬張った。
「あんまり急いで飲むと火傷するぜ?」
和谷の忠告空しく、ヒカルは舌を出して、苦笑いを浮かべた。
その表情を、微笑ましく見詰めながら、和谷は続けた。
「それにしてもみんな遅いなぁ。まぁそれぞれにみんな忙しいから時間通りには来れないだろうけど」
ヒカルは持っていたマグカップを下ろすと、
「誰も来ないよ。」
と、小さな声で呟いた。
和谷は、聞こえたのか聞こえなかったのか、後に続ける言葉が思い付かず、黙ってしまった。
「だって、伊角さんが言ってたんだもん。」
恥ずかしそうに、下向きかげんにヒカルは言った。
「な、何て?」
和谷は、まだ自分は寝てるのではないかと疑ってしまう程だった。
「オレ、和谷の気持何にも考えて無かったって。お、オレ・・・」
ヒカルはゆっくり、一つひとつ言葉を選ぶように言った。
言い終わる前に、ヒカルをクシャクシャと撫でる和谷の掌の温度を、ヒカルは感じ、そっと上を見上げた。
そこには、嬉しそうに微笑んでいる和谷の笑顔があった。
外はまだ寒く、雪でも降り出すのではないかと思われたが、この部屋の空気は確実に温度を取り戻し、
ツリーの灯かりは役割を思い出し二人を暖かく照らし出すのだった。
***
ヨシン様からの35000HITのキリリクで和谷ヒカでした。
何とも言い難いモノになってしまいましたが、こんなんで良かったのでしょうか・・・?
って、こんな事言ったら、押し付けられたヨシン様に失礼か。
一応、クリスマスのつもりで書いたんだけど、あんまクリスマス表現されてませんね(滝汗)
二人でツリーの飾りつけとかさせれば良かったかも・・・
雰囲気的には、いつぞやのキリリク、期末試験の続編的に書いたつもりです。
伊角さんのみですが。
ヘタレの和谷は書いてて楽しいです(酷)
全体的に台詞が少ないのが難点かも・・・
何か最近台詞が書けなくなりつつある気が(不)
こんなんで良ければ(二度目)ヨシン様に捧げます。
P.S.メリークリスマスです☆
管理人:夢萌
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