ひょんな事から二人っきりになってしまった拓也と輝二は、当ても無く、ただこの森の中を只管歩き回っていた。
と言うよりも、拓也が歩き回るので仕方なく輝二が付いて行くという状態だ。
二人は、泉達と離れてから一言も口を聞いていない。
お互いに、泉達と逸れたのは相手の責任だと思っているからか?
声を出したら、また言い争いになる事は必至だという事を、お互いに認識しているのか?
しかし、その事が余計に、辺りの不気味さに拍車を掛けるのだった。
ガサガサ
突然草陰から何かが動く物音がした。
「うわぁ、なっ何だ?!」
最初に声をあげたのは拓也だった。
「何でも無い。ただの風だ」
辺りを確認した後、輝二がいつもの冷静な口調で言った。
「何だぁ、ビックリさせるなよぉ」
突然の出来事にまだ心臓が高ぶっている拓也は、普段見せない表情をした。
しかし、その表情を一見するとすぐ、輝二はそっぽを向いてしまった。
二人はまた、黙ったまま歩き出した。
「なぁ、輝二、どうして黙ったままなんだ?」
あまりの沈黙さに耐えかねて、拓也が、自分の後ろを歩いている輝二に向きなおって、言った。
「どうしてって、別に理由なんか・・・」
いつもなら食って掛かる輝二が今回に限って何も言わなかった。
その様子に疑問を感じつつも、拓也は話を続けた。
「だって、いつもなら真っ先に解決方法を探そうとするじゃん、なのにさぁ」
拓也は、何か言いたそうな口調だったが、それ以上は言わなかった。
「別に・・・」
「ふぅん・・・」
輝二のあからさまな態度に、拓也は“わざと”何も言うまいと思った。
「おい輝二、後ろから何か聞こえないか?」
拓也が突然、小声で何かを気にする様に言うものだから、輝二は慌てて後ろを振り返った。
「・・・何だ、何もいないじゃないか・・・」
冷静を装いつつ向き直った輝二の前には誰もいず、輝二は辺りを見回した。
「・・・拓、・・也?」
さっきまで前を歩いていた拓也の姿が突然消え、輝二は動揺を隠せずにいた。
その姿は普段の輝二からは到底想像出来るものではなかった。
「?!」
突然、輝二は誰かに手を掴まれた。
しかし、恐怖のあまり声を出すことさえも出来なかった。
輝二が恐る恐る振り返ると、そこには消えた筈の拓也の姿があった。
「よっ、輝二!」
消えていた筈の拓也の声は明るく、全てが拓也の仕業だという事は明白だった。
「・・・怒った?」
俯いたままの輝二に、拓也は初めて自責の念を抱いた。
「・・・輝・・・二?」
そう言う拓也の声はためら躊躇いがあり、顔が徐々に赤くなっていった。
拓也が握った手を、輝二は握り返したからだ。
拓也が俯いたままの輝二の顔を覗き込むと、輝二も顔を赤らめていた。
拓也はその手を振り切ることをせず、そのまま黙って歩き出した。
しばらく歩くと、さっきまでの暗闇を切り裂くかの様に、黄金に輝く月が姿を表した。
「さっきはごめんな」
辺りが明るくなり安心したのか、拓也が重たい口を開いた。
しかし輝二は黙ったままだった。
「・・・突然消えたりして」
そんな輝二にお構いなしに、拓也は話を続けた。
「だって、お前ずっと我慢してるみたいだったから」
輝二は不意を突かれたかの様だった。
この言葉には流石に輝二は反応せざるを得なかったのだ。
「だから、お前を試すような事してごめんな」
拓也は照れくさそうに、月を見上げながら言った。
「・・・・ありがとう・・・」
本人さえも聞き取れない程の小さな声で、輝二は呟くように言った。
輝二はまだ何か言いたそうにしたが、それ以上何も言えなかった。
拓也にそんな輝二の気持ちが伝わったのか伝わらなかったのか、拓也は輝二に微笑みかけた。
そんな拓也を見て、泉達と逸れてから初めて、輝二は安心した顔を見せた。
それからしばらくして、拓也と輝二は泉達と合流する事が出来たのだった。
今回は全体的に台詞を少なめにして、臨場感出したつもりだったんですが・・・そんなの関係ないですね、私の駄文じゃ(滝汗)
タイトルについて少し。
深い森は、背景だけじゃなくて、輝二の心って言う意味も一応含んでます。
(古典で言うなら)掛詞です
こんなんでよければ、受け取って下さい。
管理人:夢萌
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はいはい、どうも〜☆有難うね☆
私の我侭リクを快く(笑)受けてくれて有難う〜。
うんうん、すっごく素敵よv輝二が可愛いvv恐がりサンなのね。
それに拓也の優しさが(?)子どもっぽくて本当に素敵っスよ!!
本当にありがとうでした〜♪
管理人:友永